2015年に金融学修士号を取得したケビン・デズモンド氏が言うように、カードゲームで勝つために役立つ批判的思考は、金融や投資において上手な意思決定を行うためにも活用できます。

金融関連の仕事に就いているということは、成功する上で重要なリスク管理について個人レベルでの知識を有しているということです。これが直接の理由かどうかは分かりませんが、金融業界で多大な成功を収める人のうち、ポーカー経験者の割合は多いと言われています。

デズモンド氏はポーカーの世界でトップレベルの競争を経験した後、ニューヨークのモルガン・スタンレーでアナリストの職を得ました。ポーカーでもトレーディングでも、予想される利益とそれに伴うリスクを比較検討することが必要となり、いずれにおいても自己管理こそが成功の鍵であると彼は強調しています。

ギャンブル目的でポーカーをプレイする人は多いですが、それは間違った戦略だというのが彼の意見です。1回のハンドの結果が重要になるようではだめで、基本的なことを学んでから次の段階に進んでいくのが一番良い方法だというのが彼のアドバイスです。

彼の11回の授業の中で、生徒たちはポーカーの戦略、心理学、そして意思決定について学びました。また、クラスメート同士が擬似的にお金を賭けて対戦できるオンラインソフトウェアを使い、数多くのポーカーマッチを行いました。その回数はデズモンド氏によるとおよそ5000ハンド、対面で行うポーカーであれば1年分に相当する数です。

ポーカーについての理解度は何よりもプレイしたハンド数に比例するものです。オンラインポーカーであれば対面のポーカーより多くのハンド数をこなすことができます。

デズモンド氏のクラスには、ゲームショウネットワークのテレビシリーズ「ハイステークスポーカー」で知られるプロギャンブラーのビル・チェン氏、プリンストン大学の学生にして2009年のワールドシリーズオブポーカーで100万ドル以上の賞金を獲得したマット・ホウリレンコ氏、AQRキャピタルマネジメントでチーフリスクマネージャーを務めるアーロン・ブラウン氏などが講師として参加しました。

各講師は、ポーカーのテクニックはテレビで見るよりはるかに高度なものであることを強調しつつ、それぞれのポーカー経験と長期的なキャリアとしての活用方法について、それぞれの見解を述べました。

ポーカーの分析とは深い迷宮のようなもので、その点に驚いた人が多かったというのが彼の意見です。

デズモンド氏のクラスでスコアボード上位のプレイヤーには、iPad Airや著名なポーカー書籍のサイン入り版など、さまざまな賞品が授与されました。最後にはライブ大会が行われ、総額3500ドル相当の商品が贈られました。

デズモンド氏は、このクラスで学べる教訓は将来の金銭的メリット以上の価値があるといいます。このクラスを受講した生徒たちはグローバルな市場でリスクを取ることにも果敢に挑戦することでしょう。ポーカーには厳しい参加資格がないので、世界のどこからでも遊び始められます。

デズモンド氏は自分のコースが成功をみた後、使った教材をオンラインで公開できないかとMIT OpenCourseWareにかけ合いました。月間100万以上のアクセスを誇るOpenCourseWareでは、「ポーカーの理論と分析」として、授業カリキュラムや宿題、授業の様子を収めたハイビジョン動画などを公開しています。